【精神科医が解説】任意入院患者の開放処遇制限とは?精神保健福祉法に基づいて解説します

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、「任意入院患者の開放処遇制限」について、精神保健福祉法に基づいて解説していきます。

目次

任意入院中の開放処遇の制限とは

精神保健福祉法では、「任意入院」という入院形態が定められています。これは体の病気で入院するときと同じように、患者さん自らの意思で入院をしていただく制度になります。

任意入院では、他の入院形態とは異なり、開放処遇での入院生活を行うことが原則となっています。そして患者さんが退院を申し出た場合は、退院することが可能となっています。

(一) 任意入院者は、原則として、開放的な環境での処遇(本人の求めに応じ、夜間を除いて病院の出入りが自由に可能な処遇をいう。以下「開放処遇」という。)を受けるものとする。

精神保健福祉法

任意入院の患者は、自分で病状を理解し、入院を望んでいる人が多いわけですから、行動制限を必要とするケースは多くはありません。自由に外出して病棟の外に出ても、問題とならないことがほとんどです。

しかし、場合によっては開放処遇を制限しなければ十分な医療や保護が図れず、どうしても行動を制限する必要が出ることがあります。その対象となるのは、主に以下のような状態の場合です。

ア 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に悪く影響する場合

イ 自殺企図又は自傷行為のおそれがある場合

ウ ア又はイのほか、当該任意入院者の病状からみて、開放処遇を継続することが困難な場合

精神保健福祉法

例えばうつ病で任意入院した患者さんの病状が悪化し、「今すぐ踏切に飛び込む!」と切迫して主張しているような状況をイメージするとわかりやすいかもしれません。

こうした場合について、精神保健福祉法では以下のように開放処遇の制限について記されています。

(三) 任意入院者の開放処遇の制限は、当該任意入院者の症状からみて、その開放処遇を制限しなければその医療又は保護を図ることが著しく困難であると医師が判断する場合にのみ行われるものであって、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとする。

(四) 任意入院者の開放処遇の制限は、医師の判断によって始められるが、その後おおむね七十二時間以内に、精神保健指定医は、当該任意入院者の診察を行うものとする。また、精神保健指定医は、必要に応じて、積極的に診察を行うよう努めるものとする。

精神保健福祉法

開放処遇の制限自体には精神保健指定医の判断は必要とされませんが、概ね72時間以内に指定医が診察を行うようにと書かれています。

つまり、応急の措置として開放処遇を制限することはあっても、漫然と続けないようにしてね、ということです。

もし開放処遇の制限が必要なほど患者さんの病状が悪化した場合は、基本的に医療保護入院に切り替えて入院を継続することが原則です。任意入院のまま、隔離や拘束などの行動制限を行うことも望ましくありません。

自分の意思で閉鎖病棟に入院する場合

ちなみに病院によっては、上記のような状態でなかったとしても任意入院者が閉鎖病棟に入院していることがあります。

例えば開放病棟に空きがないけれども閉鎖病棟なら入院できるという場合、患者さん本人の意思で閉鎖病棟に入院してもらうこともあります。

この場合は本人の意思によるものということで、書面で同意を得て入院することになります。先ほどのべた開放処遇の制限というものにあたらないとされています。

(五) なお、任意入院者本人の意思により開放処遇が制限される環境に入院させることもあり得るが、この場合には開放処遇の制限に当たらないものとする。この場合においては、本人の意思による開放処遇の制限である旨の書面を得なければならないものとする。

終わりに

いかがでしたでしょうか。

任意入院患者さんの開放処遇の制限について、精神保健福祉法を引用しながら説明してきました。

なお、以下の厚生労働省のホームページに、閉鎖病棟入院の同意書や開放処遇制限についての様式が掲載されています。

精神保健福祉法に基づく入院に関する各種様式-厚生労働省

任意入院患者の開放処遇制限
  • 任意入院では開放処遇が原則である。
  • 開放処遇での医療や保護が困難な場合、開放処遇の制限が認められている
  • 任意入院下の開放処遇制限は、漫然と続けるべきではない。
  • 本人の同意で閉鎖病棟に入院する場合は、書面での同意が必要である
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

コメント

コメント一覧 (364件)

コメントする

目次