【精神科医が解説】ガンザー症候群ってどんな病気?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、「ガンザー症候群」という精神科の用語について解説していきます。

ガンザー症候群とは

ガンザー症候群は、刑務所などの自由を制限された状況など、強いストレスがかかる状況において、的外れな回答をしたり、意識がもうろうとしてしまったりする症候群です。

刑務所で働いていたドイツの精神科医Sigbert Ganserによって19世紀末に最初に報告され、彼の名前をつけてガンザー症候群と名付けられました。

具体的な内容としては、

1+1は?と聞かれて3と答える

馬の足は何本?と聞かれて5本と答えてしまう

自分の年齢を聞かれて2歳と答える

といったように、的外れな回答をしてしまうことが特徴的です。またもうろう状態となり、意識の混濁を伴うこともあります。

ほかには、その症状の期間について記憶喪失(健忘)が見られることがあります。また、幻覚などが現れることもあるようです。

こうした症状は、意図的に病気のふりをする「詐病」と間違いられやすいですが、どちらかというと、解離性障害の一つと言われています。

解離性障害とは、心が強大なストレスに晒されたとき、心の防衛メカニズムによって意識や記憶などが分離してしまい、記憶喪失やてんかん、遁走状態など、さまざまな症状を引き起こす病気です。

ガンザー症候群の原因

ガンザー症候群は、囚人において多く見られることが知られています。解離性障害に分類されることからわかるように、刑務所などの拘禁環境下の強いストレスが原因ではないかと考えられています。

自由を奪われたり、命を奪われるような強烈なストレスは、解離症状を引き起こしてしまうほど大きいということがわかります。

ガンザー症候群の診断

「ガンザー症候群」の病名は、米国精神医学会の発行するDSM-Vという診断基準には収載されていません。

ICD-10というWHOの診断基準には、F44.8 他の解離性(転換性)障害に分類されています。

とはいえ、通常の精神科の現場で、ガンザー症候群の患者さんを診断することは非常に珍しいと言っていいでしょう。

ガンザー症候群の治療

解離性障害がそうであるように、ガンザー症候群に保険適応のある薬物療法はありません。

ただ、基本的にガンザー症候群の症状は、数日のうちに消失し軽快することが多いようです。

発症にストレスの関与が疑われている病気であるため、ストレス因から離れることは、治療の一つとなりうるでしょう。自分や他人を傷つけるような行動が出現するなどした場合は、入院治療も検討されます。

まとめ

ガンザー症候群は、刑務所の囚人など、強い拘禁ストレスにさらされた環境下で起こる症候群のことです。

基本的には、解離性障害の仲間とされており、拘禁ストレスに対する心の防衛反応から起こる精神症状だと考えられています。

普段の診療現場で見かけることは非常に稀ですが、刑務所などで働いていると目にすることがあるのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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