カプグラ症候群とは
カプグラ症候群(Capgras syndrome)とは、
「身近な人が、そっくりの別人にすり替わっている」と確信してしまう状態のことを指します。
たとえば、
- 「この人は見た目は夫だけど、中身は別人だ」
- 「パートナーが偽物にすり替わっている」
といった、強い思い込みを抱きます。
なぜ「カプグラ」と呼ばれるかというと、この名前は、この症候群を最初に報告したフランスの精神科医、ジャン・マリー・ジョゼフ・カプグラ(Jean Marie Joseph Capgras)に由来しています。
彼は1923年、「L’illusion des sosies(そっくりさんの錯覚)」という論文で、「患者が親しい人をそっくりの偽物だと信じ込む症例」を発表しました。
そこから、彼の名前をとって「カプグラ症候群(Capgras syndrome)」と呼ばれるようになった、というわけです。今でも、「ソジーの錯覚」と呼ばれることもあります。
カプグラはなぜ起こる?
「カプグラ症候群」は、「妄想性人物誤認症候群」の一つとして分類されており、統合失調症や認知症といった病気の方に起こることが多いと言われています。
「器質性精神障害」と言われ、脳の外傷や、脳の細胞が変性してしまう認知症のように、脳に損傷が加わったことで起こる精神疾患で見られることが多く、その頻度は25〜40%ともいわれています。
カプグラの詳しい原因についてははっきりわかっていませんが、視覚で認知した情報と、それに対する感情的な情報が、うまく統合されないことによるのではないかという仮説があります。
「見た目(知覚)的には一緒だけど、いつものあの人ではない(感情的な情報)」
この微妙な違いが、「別人だ」と思い込ませてしまうということです。
カプグラの妄想の対象となる人物は、未婚であれば親や、既婚であれば配偶者など、重要な人物であることが多いようです。
ちなみに、このグループの中に、「フレゴリ症候群」というものがあります。これは、「特定の人が、変装して周囲に姿を現している」といった思い込みをしてしまう病気で、同じ「妄想性人物誤認症候群」に分類されています。
カプグラの治療
薬物療法
「カプグラ」自体が、精神疾患の診断基準で明確に定められた疾患ではないので、特効薬というものはありません。
あくまで元の疾患に対する治療を行っていくことになります。
例えば、統合失調症であれば、「抗精神病薬(幻覚や妄想を抑えるお薬)」
認知症であれば、「抗認知症薬」や、「抗精神病薬」
などを投与することが考えられます。
周囲のサポート
また、カプグラに限らず、妄想を抱いている患者さんの対応には、注意が必要です。
無理に「あなたは間違っています」と説得しようとすると、かえって不安や怒りを強めることもあります。
安心感を持ってもらう対応がとても大切です。
まとめ
以上、カプグラ症候群について解説してみました。
- カプグラとは、身近な人が別人にすり替わったと確信してしまう症状。
- 脳の器質的な原因があると、起こりやすいといわれている。
- 背景疾患を治療しつつ、安心感を与える対応が大切。
精神科医Youtuberの松崎先生が簡潔に紹介してくれている、以下の動画も参考にしてみてください。