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この記事について
こんにちは。精神科医のやっくんです。
この記事では、「フレゴリの錯覚」というキーワードについて解説していきます。
フレゴリの錯覚とは
フレゴリの錯覚(Fregoli syndrome)とは、
「見知らぬ他人が、実は知り合いが変装して姿を変えているだけだ」と確信してしまう状態を指します。
たとえば、
- 「街で会ったあの人は、昔の知人が変装してつけ回している」
- 「別々の人物に見えるけれど、全部同一人物が化けているだけだ」
といった、修正できない強い思い込みを抱きます。要するに、「妄想」ということになります。
なぜ「フレゴリ」と呼ばれるか?
この名前は、イタリアの俳優レオポルド・フレゴリ(Leopoldo Fregoli)に由来しています。
彼は舞台上で、驚くほど早くさまざまな役柄に変装して演じ分けることが得意だったため、
この錯覚現象にその名がつけられました。
精神医学的には、1930年代にCourbonとFailによって報告された症例に基づき、「フレゴリの錯覚(Fregoli delusion)」という名前が定着しました。
フレゴリの錯覚はなぜ起こる?
フレゴリも、カプグラ症候群と同様に、妄想性人物誤認症候群の一種です。
特に、統合失調症(幻覚や妄想が見られる精神の病気)や、認知症や脳外傷後といった、脳自体が損傷してしまうタイプの病気で起こることも多いようです。
なぜこうした妄想が起こるのか、はっきりとした病態自体はわかっていません。
フレゴリ症候群の治療
薬物療法
フレゴリ症候群自体に特効薬はありません。
あくまで背景となる疾患(統合失調症や認知症など)への治療が中心となります。
- 統合失調症であれば、「抗精神病薬(幻覚や妄想を抑える薬)」
- 認知症であれば、「抗認知症薬」や「抗精神病薬」
が使用されることが一般的です。
周囲のサポート
妄想を抱いている患者さんに対しては、
無理に「あなたは間違っています」と否定しようとすると、症状が悪化することがあります。
- 相手の不安をあおらない
- できる限り安心できる環境を整える
といった受容的な対応がとても重要です。
まとめ
以上、「フレゴリの錯覚」について解説しました。
まとめ
- 「フレゴリの錯覚」とは、見知らぬ他人を、知っている人が変装していると確信してしまう症状。
- 脳の器質的障害や統合失調症などが背景にあることが多い。
- 背景疾患を治療しつつ、安心感を与える対応が大切。