【論文抄読】せん妄に対するラメルテオンの予防効果:ランダム化プラセボ対照試験

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、せん妄の予防に関する論文を紹介します。2014年にJAMA Psychyatryに掲載された 順天堂大学教授の八田耕太郎氏らによる論文です。

この記事の内容

今回抄読するのは、2014年にJAMA Psychyatryに掲載された 「せん妄に対するラメルテオンの予防効果:ランダム化プラセボ対照試験」という論文を抄読していきます。

論文:Hatta K, Kishi Y, Wada K, et al. Preventive effects of ramelteon on delirium: a randomized placebo-controlled trial. JAMA Psychiatry. 2014

研究の背景

せん妄は、意識や注意の変動を伴う認知機能の急激な変化のことを指し、救急科や内科・外科病棟における入院時の有病率は11-33%という報告もあります。今後、高齢人口の増加によりさらに増加していく可能性も考えられます。

せん妄に対しては抗精神病薬の有用性も報告されてきましたが、副作用の観点から使用に躊躇する場合もあり、今回、いくつかのケースシリーズで効果が示唆されていたメラトニン作動薬:ラメルテオンがせん妄の予防に有効かどうかを調査しました。

研究のデザイン

 多施設共同、評価者盲検、ランダム化プラセボ対照試験が、4 つの大学病院と 1 つの総合病院の集中治療室と通常の急性期病棟で実施されました。

 対象は65歳から89歳までで、重篤な医学的問題により新たに入院し、薬を経口摂取可能な患者。予想入院期間もしくは余命が48時間未満の患者は研究から除外されました。

介入

67 人の患者が密封封筒法を使用してランダムに割り当てられ、ラメルテオン (8 mg/日、患者 33 人) またはプラセボ (患者 34 人) が 7 日間毎晩投与されました。

主要アウトカム

精神障害の診断と統計マニュアル (第 4 版) で定義されているせん妄の発生率を主要アウトカムとしています。

結果

 ラメルテオンはせん妄のリスク低下と関連し (3% vs 32%; P = 0.003)、相対リスクは 0.09 (95% CI、0.01-0.69) でした。

リスク因子がコントロールされた後でも、ラメルテオンは依然としてせん妄の発生率の低下と関連していました(P = 0.01; オッズ比、0.07 [95% CI、0.008-0.54])。

 せん妄の発症までの期間についてのカプラン・マイヤー推定値は、ラメルテオンでは 6.94 (95% CI、6.82-7.06) 日、プラセボでは 5.74 (5.05-6.42) 日でした。

 ログランク検定による比較では、ラメルテオンを服用している患者のほうがプラセボを服用している患者よりもせん妄の頻度が有意に低いことが示されました (χ(2) = 9.83; P = 0.002)。

結論

 急性期治療のために入院した高齢患者にラメルテオンを毎晩投与すると、せん妄に対する予防効果が得られる可能性が示唆されました。

著者らは、せん妄におけるメラトニン神経伝達がせん妄の病理に関連している可能性が考えられると述べています。

コメント

せん妄に対しては、臨床現場では抗精神病薬が用いられることがありますが、高齢者に対する抗精神病薬は錐体外路症状や過鎮静、誤嚥など、ためらわれる場面が多くあります。

この研究では、高齢者に対しても比較的安心して使用できるラメルテオン(ロゼレム)が予防効果を示したということで、臨床現場におけるせん妄予防についての一つの重要な知見を示しました。

参考文献

Hatta K, Kishi Y, Wada K, et al. Preventive effects of ramelteon on delirium: a randomized placebo-controlled trial. JAMA Psychiatry. 2014;71(4):397-403. doi:10.1001/jamapsychiatry.2013.3320

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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