【精神科医が解説】考えが抜きとられる!?「思考奪取」ってどんな症状?どんな病気でみられる?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、「思考奪取(しこうだっしゅ)」という用語について解説していきます。

思考奪取とは

思考奪取とは、「自分の考えが抜き取られてしまう」という病的な体験のことを指す用語です。

読んで字のごとく、思考が他人に奪取されてしまうということになります。

この症状は、「思考」の障害の一種類と考えられています。

思考の異常の種類

①思路の異常・・・連合弛緩、思考制止、観念奔逸など

→思考の過程の異常。まとまりを欠いたり、異常に亢進したり制止してしまう

②思考体験の異常・・・思考伝播・自生思考・強迫観念など

→自我が障害され、思考を自分でコントロールできなくなる

③思考内容の異常・・・妄想着想・妄想知覚・被害妄想など

この中でも、「思考奪取」は、「思路体験の異常」、つまり自我が障害され、自分で思考をコントロールできなくなるタイプの異常と考えられています。

思考奪取がみられる病気の例

「思考の障害」が見られる病気として代表的なものは、「統合失調症」です。統合失調症では、思考奪取のみならず、様々な「思考の障害」が見られます。

統合失調症の患者さんでは、「自我」の境界が曖昧になり、自分と他人の区別が曖昧になってしまうことが特徴的です。

このため、自分のものであるはずの思考が他人に抜き取られたり、他人に伝わってしまう(考想伝播)、吹き込まれる(思考吹入)と言った異常な体験が見られることがあります。

統合失調症の症状は、幻覚や妄想などの陽性症状(本来ないものがみられる)と無為・自閉などの陰性症状(あるはずのものがなくなる)という分類で大きく分けられますが、思考奪取は陽性症状として分類される症状の一つです。

思考奪取に対する治療

思考奪取の症状は、他の統合失調症の陽性症状と同様に、抗精神病薬を用いて治療をすることが多いです。

急性期には活発な病的体験が見られていても、適切な薬物療法を行うことで速やかにそうした体験が消失することも見られます。

薬を使っても症状の改善が乏しいケースでは、修正型電気けいれん療法など、薬物療法以外の治療法を選択することもあります。

おわりに

思考奪取」という用語について解説しました。以下が内容のまとめです。

まとめ
  • 思考奪取は「自分の考えが抜き取られる」という症状のこと
  • 思考体験の異常によるものとされており、統合失調症で見られる
  • 抗精神病薬による薬物療法などが効果的な場合がある
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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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