【精神科医が解説】長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で認知症は診断するな!?何点以下で認知症の疑いになる?

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はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、臨床現場で良く用いられる改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)について解説していきます。

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、1974年に精神科医の長谷川和夫先生が開発した認知症の簡易スクリーニングスケールになります。

通称「長谷川式」などと呼ばれ、認知症の診療の現場ではとても親しまれている検査です。

この「長谷川式」でよく聞かれるのが、「長谷川式が何点以下だったら認知症になるの?」といった質問です。

20 点以下で認知症の疑いあり

長谷川式認知症スケールは、一般的に20点以下であれば認知症の疑いがあると言われています。(出典:加藤仲司ほか: 老年精神医学雑誌 1991; 2: 1339.)

HDS-Rは、あくまでも認知症のスクリーニングツールであり、あくまでも認知症の疑いを発見するテストになります。

しかし、これまでの研究では、HDS-Rと認知症の重症度の間で関連が示唆されていて、以下のような重症度とスコアの平均得点を示した研究もあります。

重症度平均得点
非認知症24.45±3.60点
軽度認知症17.85±4.00点
中等度認知症14.10±2.83点
やや高度認知症9.23±4.46点
高度認知症4.75±2.95点
出典:図解理学療法検査・測定ガイド

長谷川式では認知症は診断できない

ということで、5分から10分程度で手軽に行うことが出来て、認知症の重症度の目安がわかる長谷川式認知症スケールは優れたツールです。

でも、本質的には「長谷川式で〇〇点だったから認知症」と診断できるわけではありません

HDS-Rで高得点がとれていたとしても、認知機能の評価は不十分なことがあり、他の詳細な検査を行うとかなり認知機能低下が進んでいたり、日常生活に支障を来していたりといったことは多々あります。たかが5分10分の検査では、すべての項目を十分評価できるわけではないのです。

認知症の診断基準は?

認知症の診断には、精神障害の診断基準であるICD-10やDSM-5といった診断基準を用います。

日本神経学会が発表している「認知症診療ガイドライン(以下画像出典)」では、代表的な診断基準としてICD-10やDSM-5などの要約したものが示されています。

というわけで、認知症の臨床的な診断はあくまで診断基準に則って行われるわけで、その基準を満たすかどうかというのは患者さんの診察や日常生活についての病歴聴取、種々の検査結果などを参考に判断するものです。

ですから、例えばケースカンファレンスのプレゼンなんかで「長谷川式の点数が〇〇点なので認知症です!(もしくは認知症じゃないです)」とだけ言ってしまうと、精神科医からはツッコミが入ってしまいます。

おわりに

色々と言いましたが、長谷川式の点数自体は、認知機能低下の判断するうえでひとつの参考にはなりますし、例えば現場でも「長谷川式が4点でした」と言われたら、「かなり認知症が進んでいるんだな・・・」とわかります。

また介護認定の書類など、役所に提出する診断書などでも、認知症の程度の客観的な指標としてこうした検査の結果を書くと喜ばれることもあります。

ただ、点数が高くても実際の認知機能は下がっていて、あまりアテにならないということもあります。

あくまで長谷川式は認知症診断のスクリーニングツールであることを理解した上で、上手に使いこなせるといいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

まとめ

  • 長谷川式は認知症の評価の便利なスクリーニングツールだが、認知機能の評価には不十分なときもある
  • 診断自体は、長谷川式で決めるのではなく診断基準に所見、病歴を照らし合わせてするもの
  • 本質を理解して上手に使いこなせば、有用なツールになる!
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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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