【精神科医が解説】精神科の入院形態とは?全ての入院形態についてまとめて解説

精神科の入院形態
目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、精神保健福祉法で定められた、精神科における入院形態について解説していきます。

この記事について

精神科における入院形態の種類について、精神科医が解説します!

精神科の入院形態

精神科病院への入院は、「精神保健福祉法」という法律で定められた入院になります。

その入院形態は合計で5つありますが、大きく分けると「本人の意思での入院」(自発的入院)か、そうでないか(非自発的入院)に分けられます。

本人の意思で入院する場合は「任意入院」、それ以外の「医療保護入院」「措置入院」「応急入院」「緊急措置入院」の4つに分かれます。

ちなみに入院全体では、任意入院・医療保護入院・措置入院が99%を占めると言われており、その中でも比率は6:4:0.1程度と言われています。

以下に、5種類の入院形態についてまとめました。

精神保健福祉法による入院形態まとめ
精神科病院、任意入院、医療保護入院、措置入院、応急入院、緊急措置入院

任意入院

任意入院は、精神科の入院の中でも最も基本的な入院形態です。

本人の同意に基づく入院であり、精神保健指定医の診察は必要ありません。医師と患者が入院に合意の上で、患者さんの書面で同意を得て行われます。

精神保健福祉法では、「精神病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない」(法二十条)とされています。

つまり、精神科の入院は、原則としては本人の同意で入院することを目指さないといけないわけです。

ご本人の同意で入院している以上、基本は、患者さんの退院希望があった場合はそのまま退院となりますが、精神保健指定医が診察した場合に医療及び保護の必要があると判断された場合、72時間以内の退院制限が可能です。

これはどういう場合かというと、例えば任意入院中の患者さんが「これから踏切に飛び込んで死にますので退院します」といっている場合など、病状に左右されて明らかに危険で、医療や保護が必要な状況なのに退院を希望している場合になります。

この場合、さすがに病院側も「わかりました。じゃあどうぞ退院してください。いってらっしゃい」というわけには行きませんよね。

こうした時は、任意入院の継続が困難となり、医療保護入院に切り替えて入院を継続をせざるを得ない場合もあります。

医療保護入院

医療保護入院は、精神保健指定医1名の診察のもと、家族等のいずれかの者の同意により、本人の同意を得ることなく入院させるものです。

精神障害のある患者さんが、医療と保護のため入院が必要な状態であるものの、自分自身や周囲の状況が把握できず、治療の必要性の説明に同意できる状態にないときに行われます。

基本は家族等の同意によって行うものですが、家族等がいない、もしくは誰も意思表示ができず同意が得られない場合は、本人の居住する市町村長の同意によって行うこともあります。

参考:【精神科医が解説】医療保護入院の同意者になれる人は?法律に基づいて解説します

入院及び退院の場合には、10日以内に都道府県知事に届け出を行わなければなりません。この届けは、医療保護入院の「入院届」「退院届」といった書類を提出することで行います。

ちなみに医療保護入院の入院届は黄色の紙にプリントするので、「黄紙」と呼ばれたりします。

措置入院

措置入院は、上の2つの入院形態とは大きく異なる入院形態です。

その特徴は、精神疾患のために自傷・他害のおそれがある患者に対して、都道府県知事の権限により入院が行われるというところにあります。

入院の流れとしては、警察官や検察官などから都道府県知事へ通報され、その後に2名以上の精神保健指定医による診察が行われます(措置診察)。ここで精神保健指定医2名が措置入院に該当(要措置)と診断する必要があります。

この入院形態任意入院や医療保護入院と大きく異なるのは、あくまでも行政措置としての入院であることです。

医療保護入院や任意入院では、本人や家族の同意が重要になってきますが、措置入院は自傷他害のおそれがある精神障害者に対する都道府県知事の命令で入院するものです。つまり本人はもちろん、家族が反対したとしても、措置入院では関係がありません。 

また自傷・他害の恐れがある方への行政措置という位置付け上、外出も厳しく制限されます。

しばらく入院治療を行い、措置入院の要件(自傷他害のおそれ)が消失した場合は、医療保護入院や任意入院といった入院形態への切り替えや退院に向けた手続きが行われます。

緊急措置入院

緊急措置入院は、緊急を要する自傷他害のおそれがある患者に対して行われる入院形態です。

基本的に措置入院と同様に、都道府県知事の権限による入院になりますが、指定医2名の診察の手順が踏めないような緊急性のある場合に対して、指定医1名の診察で72時間以内に限り行われるものです。

これはあくまで緊急の場合の暫定的な入院形態であり、72時間を超えて入院が必要な場合は、措置入院に切り替えるか、他の入院形態(医療保護入院や任意入院)に切り換える必要があります。

応急入院

応急入院は、精神保健指定医が診察をして直ちに入院の必要性があると判断された方で、本人の同意が得られず、なおかつ家族等とも連絡が取れないなどの理由で家族の同意を得ることができない場合に適用されます。

応急入院は、72時間が限度となっており、応急入院ができるのは都道府県知事が指定した応急入院の指定病院のみになります。

基本的には72時間以内で治療の決着をつけるのは難しいと思われ、72時間以内に家族等・もしくは市町村長等の同意を得て医療保護入院に切り替えるという流れになると思います。

おわりに

精神保健福祉法による入院形態を5つ、ご紹介しました。

これらの入院形態には、患者さんの安全や人権を守るために、それぞれに様々な条件や規定があります。混乱してしまいがちですので、よく整理して覚えるようにしましょう。

精神保健福祉法による入院形態まとめ
精神科病院、任意入院、医療保護入院、措置入院、応急入院、緊急措置入院
まとめ

精神保健福祉法には、5つの定められた入院形態がある
基本的なのは任意・医療保護・措置の3つ!
措置入院・緊急措置入院とその他の入院形態では入院の権限者が異なる!

参考文献・サイト

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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