認知症における「振り返り現象」とは?どの認知症で多いの?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、認知症でみられる「振り返り現象」について解説していきます。この言葉、皆様は聞いたことがあるでしょうか?

この記事の内容

認知症でみられる「振り返り現象」について解説していきます。

振り返り現象とは

「振り返り現象」とは、認知症などでみられる症状の一つです。

英語では「head-turning sign」などと呼ばれます。

この現象は、認知症の患者さんが、何か質問をされた時に、答えたりせずに家族などの方を振り返って助けを求めるという現象です。

この現象は、アルツハイマー病で最も高頻度に見られると言われています。

認知症の患者さんでは、診察室で質問されて答えがわからなかったりした場合に、取り繕うような返答をしたり、言い訳をしたりする様子がみられることがあります。

この振り返り現象も、診察室で認知症の患者さんが示す特徴的なサインの一つであると言えます。

認知症のタイプと振り返り現象

振り返り現象がみられる最も特徴的な病気は、アルツハイマー病であると言われています。

この現象について、「『振り返り徴候』はアルツハイマー病の臨床マーカーになり得るか?」という我が国の研究があります。

この研究では、アルツハイマー病やレビー小体型認知症(DLB)、進行性核上性麻痺(PSP)、血管性認知症(VaD)や軽度認知障害などの認知症患者を対象に振り返り現象の頻度や回数などを調べたものです。

よく言われているように、アルツハイマー病では振り返り現象の頻度は42%と最も高い結果となりました。

また重症度(問診中に振り返った回数により分類)に関しても、アルツハイマー病が最も高い数字になっています。

この論文では、この原因について、考察を述べています。

振り返り現象は、患者の認知機能を超えた問題に直面した場合に、その場を切り抜ける戦略の一つと考えられ、実行機能が低下している場合はこのようなアイデアも思い浮かばない可能性があります。

アルツハイマー病では前頭葉の実行機能障害が記憶障害よりも軽度である可能性があり、アルツハイマー病以外の認知症ではその逆である可能性があります。

そのため、アルツハイマー病では低下した記憶障害と比較的保たれた実行機能の不均衡の結果として、このような対処行動に及ぶのではないかと述べています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

アルツハイマー病などの認知症でみられる振り返り現象について説明しました。

「振り返り現象」は、それだけで認知症の診断や鑑別が可能な徴候ではありませんが、診察室において参考となる所見の一つではあると思います。

明日からの、診療や看護・介護の参考にしていただけると幸いです。

まとめ

振り返り現象は、認知症患者さんが答えを求められた際に家族などの方を振り返り助けを求める現象。
アルツハイマー病で最も高頻度に見られると言われている。

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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