はじめに
こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。
今回は、「ロゼレム(ラメルテオン)の投与禁忌・併用禁忌薬」について解説していきます。
ロゼレム(ラメルテオン)の禁忌・併用禁忌について解説していきます。
ロゼレム(一般名ラメルテオン)とは
ラメルテオンは、メラトニン受容体アゴニストという種類に分類される不眠症の治療薬です。
この睡眠薬は、メラトニン受容体という睡眠に関わる受容体に働き、自然な眠りや睡眠のリズムを得るために有効と言われているお薬です。
ベンゾジアゼピン系などのこれまでの睡眠薬と異なり、依存性などが問題にならず、自然な眠りを催してくれるというメリットがあります。
その分効き目も比較的マイルドで、強烈な睡眠作用を持つ薬ではありませんが、副作用の少なさから、現場では安心して使える一手として重宝されています。
しかし、ロゼレムには投与が禁忌となる条件があります。
ラメルテオンの併用禁忌
併用禁忌は3つ
ラメルテオンの添付文書では、併用禁忌薬について「次の患者には投与しないこと」と定めています。
本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者
高度な肝機能障害のある患者[本剤は主に肝臓で代謝されるため、本剤の血中濃度が上昇し、作用が強くあらわれるおそれがある。]
フルボキサミンマレイン酸塩を投与中の患者
出典:ラメルテオン 添付文書
さて、まず1つ目の「過敏症の既往歴のある患者」というのは当然として、2つ目の「高度な肝機能障害のある患者」と「フルボキサミンマレイン酸塩を投与中の患者」について、なぜなのか考えてみましょう。
高度な肝機能障害
この理由は、もうすでに上に書いてありますが、肝臓による薬の代謝が影響しています。
ラメルテオンは主に肝臓で代謝される薬剤です。そのため肝機能障害があると、薬物がうまく代謝されず、血中濃度が上昇してしまうことで、作用が強くなりすぎる可能性があります。
そのため添付文書では、慎重投与となる患者について、「軽度から中等度の肝機能障害のある患者」と書かれています。
添付文書では、「高度」がどのような分類においてなされるかについては記載がされていませんでした。
フルボキサミンを投与している
精神科領域でピットフォールになりがちなのが、3つ目です。「フルボキサミンマレイン酸塩」とは、商品名で言うと抗うつ薬の「デプロメール」になります。これはSSRIに分類される薬で、精神科領域では強迫性障害やうつ病などに用いられます。
このデプロメールを飲んでいる患者に対して、ラメルテオンは禁忌となっています。なぜでしょうか。
ラメルテオンは、主にCYP1A2という代謝酵素によって代謝されるといわれています。
しかし、フルボキサミンは、このCYP1A2を強く阻害し、他にCYP3A4などの代謝酵素も阻害します。そのため、CYP1A2を主な代謝酵素としているラメルテオンの血中濃度が上昇し、作用が強く出過ぎてしまうリスクがあるわけです。
デプロメールは1日2回投与のため、うつ病に対しては第1選択となりづらい薬ではありますが、強迫性障害などに対してはよく処方される薬です。
デプロメールを飲んでいる患者さんが不眠を訴えた時、思わずラメルテオンを処方してしまうと、併用禁忌を踏んでしまうことになります。
併用注意の薬
ちなみに併用注意薬には、キノロン系抗菌薬やフルコナゾール・ケトコナゾールなどの抗真菌薬、マクロライド系抗真菌薬などが挙げられています。
これらもCYPに対して阻害剤として働くため、同様の仕組みでラメルテオンの血中濃度が高まり、作用が強く現れてしまう可能性があります。
またCYP誘導剤として働くリファンピシン(結核の治療薬)については、逆にラメルテオンの血中濃度が低下し作用が減弱する可能性があるとされ、併用注意とされています。
おわりに
ラメルテオンの併用禁忌・注意などについて解説しました。
ラメルテオンは不眠症の治療の新たな武器となってきているお薬ですが、肝代謝であることや、CYP1A2で主に代謝されることから、それに影響がある場合の患者さんには注意しておく必要があります。
特にフルボキサミンとの併用禁忌は有名な話ではありますが、思わず忘れてしまうケースもあり、処方する際は頭に入れておく必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ラメルテオンは主に肝代謝で、CYP1A2などの代謝を受ける
これらを阻害する薬剤、特にフルボキサミンとの併用禁忌は注意が必要!
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