【精神科医が解説】悪性症候群の大症状・小症状とは?診断基準について紹介

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、悪性症候群の大症状・小症状について解説していきます。

この記事の内容

悪性症候群の大症状・小症状や診断基準について精神科医が解説します!

悪性症候群とは

悪性症候群とは、主に抗精神病薬など、精神神経用薬の開始や中断などによって引き起こされる症候群です。英語では”Neuroleptic malignant syndrome(NMS)”などと呼びます。

この病気は、発熱や筋強剛、動悸や発汗などの自律神経症状をきたし、場合によっては死にいたる状態になることもあります。悪性症候群(NMS)という病名が定義され始めたのは1960年ごろですが、当時は致死率が70%以上であったと言われています。

今でこそモニタリングや治療の方法論が進歩し、致死率は下がっていますが、「悪性」という名前は伊達ではないのです。

その診断基準についてみていきましょう。

悪性症候群の診断基準

Levensonらの診断基準

よく用いる「大症状」「小症状」といった診断基準は、このLevensonらの診断基準によるものです。診断基準の中でも代表的なものだと思います。

シンプルでわかりやすい基準なので、臨床現場でも用いやすい気がします。

Levenson らの基準

以下の大症状の 3 項目を満たす、または大症状の 2 項目+小症状の 4 項目を満たせば確定診断
大症状
1)発熱

2)筋強剛
3)血清 CK の上昇
小症状
1)頻脈
2)血圧の異常
3)頻呼吸
4)意識変容
5)発汗過多
6)白血球増多

他にもいくつか紹介します。

Popeらの診断基準

Popeらの基準

3項目を満たせば確定,2項目と「その他」の1項目なら可能性が高い(probable NMS)

  1. 発熱(他の原因がなく、37.5℃以上)
  2. 錐体外路症状(2つ以上):鉛管様筋強剛,歯車現象,流涎,眼球上転,後屈性斜頚,反弓緊張,咬痙,嚥下障害,舞踏病様運動,ジスキネジア,加速歩行,屈曲伸展姿勢
  3. 自律神経機能不全(2つ以上):血圧上昇(通常より拡張期血圧が20mmHg以上上昇),頻脈(通常より脈拍が30回/分以上増加),頻呼吸(25回/分以上),発汗過多,尿失禁
  • その他:意識障害,白血球増加,血清CKの上昇

Caroffらの診断基準 

Caroffらの基準

  1. 発症の7日以内に抗精神病投与を受けている事(デポ剤の場合2-4週間以内)
  2. 38.0℃以上の発熱
  3. 筋強剛
  4. その他(5つ以上):精神状態の変化,頻脈,高血圧あるいは低血圧,頻呼吸あるいは低酸素症,発汗あるいは流涎,振戦,尿失禁、CK上昇あるいはミオグロブリン尿,白血球増多,代謝性アシドーシス
  5. 他の薬剤の影響,他の全身性疾患や神経精神疾患を除外できる

DSM-Ⅳの神経遮断薬悪性症候群診断基準

DSM-Ⅳの基準


A.神経遮断薬の使用に伴う重篤な筋強剛と体温の上昇の発現
B.以下の 2 つ(またはそれ以上)
発汗、嚥下困難、振戦、尿失禁、昏迷から昏睡までの範囲の意識水準の変化、無言症、頻脈、血圧の上昇または不安定化、白血球増多
、筋損傷の臨床検査所見(例:CK の上昇)
C.基準 A および B の症状は、他の物質(例:フェンシクリジン)または神経疾患または他の一般身体疾患(例:ウィルス性脳炎)によるものではない
D.基準 A および B の症状は、精神疾患(例:緊張病性の特徴を伴う気分障害)ではうまく説明されない

おわりに

臨床現場においては、悪性症候群は比較的緊急での対応を要する症候の一つです。そんな悪性症候群の診断基準について、いくつか紹介してみました。現場

似たような症状をきたすものとして、統合失調症などで起こる「悪性カタトニア」や、抗うつ薬の使用によって引き起こされる「セロトニン症候群」など、紛らわしい用語や症候がたくさんあるので、注意が必要です。

参考文献

悪性症候群ー厚生労働省, URL: https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j03.pdf

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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