【精神科医が解説】精神科入院における定期病状報告書とは?法律に基づいて解説します。

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、精神保健福祉法で定められた、「定期病状報告」というものについて解説していきます。どちらかというと医療従事者向けの内容になると思います。

この記事について

精神科入院における「定期病状報告」について、法律を照らし合わせて解説します!

※令和6年4月1日に施行される精神保健福祉法の改正により、医療保護入院者の定期病状報告書は不要となります。そのため、医療保護入院に関しては3月末までの内容として考えていてください。

定期病状報告とは

精神科には、精神保健福祉法に基づいた様々な入院形態があります。

その主なものには、「任意入院」「医療保護入院」や「措置入院」といった形態があります。これらの入院形態には、長期の漫然とした入院を防ぐ取り組みとして、「定期病状報告」というものが法律で定められています。

この報告は、定期的に「定期病状報告書」というものを提出することで行います。

まず、その根拠となる条文についてみていきましょう。

(定期の報告等)

第三十八条の二 措置入院者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者は、措置入院者の症状その他厚生労働省令で定める事項(以下この項において「報告事項」という。)を、厚生労働省令で定めるところにより、定期に、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に報告しなければならない。この場合においては、報告事項のうち厚生労働省令で定める事項については、指定医による診察の結果に基づくものでなければならない。

2 前項の規定は、医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者について準用する。この場合において、同項中「措置入院者」とあるのは、「医療保護入院者」と読み替えるものとする。

3 都道府県知事は、条例で定めるところにより、精神科病院の管理者(第三十八条の七第一項、第二項又は第四項の規定による命令を受けた者であつて、当該命令を受けた日から起算して厚生労働省令で定める期間を経過しないものその他これに準ずる者として厚生労働省令で定めるものに限る。)に対し、当該精神科病院に入院中の任意入院者(厚生労働省令で定める基準に該当する者に限る。)の症状その他厚生労働省令で定める事項について報告を求めることができる。

上記の条文によると、措置入院者、医療保護入院者、そして一定の基準を満たした任意入院者に対して、症状その他の報告を求めることができると書いてあります。

それぞれの入院形態について

措置入院

【精神保健福祉法施行規則】によると、措置入院者に対する定期病状報告については、以下のように書かれています。

(措置入院者に係る定期報告事項等)
第19条第3項 法第38条の2第1項前段の規定による報告は、法第29条第1項の規定による措置が採られた日の属する月の翌月を初月とする同月以後の6月ごとの各月に行わなければならない。ただし、入院年月日から起算して6月を経過するまでの間は、3月ごとの各月に行われなければならない。

ということで、入院から6か月までの間は、翌月を初月として3か月の各月に行い、入院日から6か月以降は、6か月ごとに報告を行うことが義務付けられています。

医療保護入院

続いて、医療保護入院についてです。

(医療保護入院者に係る定期報告事項等)
第20条第3項 法第38条の2第2項において準用する同条第1項前段の規定による報告は、法第33条第1項の規定による措置が採られた日の属する月の翌月を初月とする同月以後の12月ごとの各月に行わなければならない。

医療保護入院者に対しては、12月ごとの各月として定期病状報告が義務付けられています。

※令和6年4月1日に施行される精神保健福祉法の改正により、医療保護入院者の定期病状報告書は不要となります。そのため、医療保護入院に関しては3月末までの内容として考えていてください。

任意入院

先ほどの精神保健福祉法の条文を見直してみると、任意入院に対しては、以下のように書いてあります。

都道府県知事は、条例で定めるところにより、精神科病院の管理者(★中略)に対し、入院中の任意入院者(中略)の症状その他厚生労働省令で定める事項について報告を求めることができる。

精神保健福祉法 一部改変

(★)で略した精神科病院の管理者についての指定は、以下のようにかっこ書きされています。

第三十八条の七第一項、第二項又は第四項の規定による命令を受けた者であつて、当該命令を受けた日から起算して厚生労働省令で定める期間を経過しないものその他これに準ずる者として厚生労働省令で定めるものに限る。

長くなるので省略しますが、この三十八条の七には、厚生労働大臣・都道府県知事は、精神科病院での処遇が不適当と判断される病院に対して、「改善命令」を出せることが記載されています。つまり基本的には、この改善命令が出ている病院が対象になるということになります。

省令等で定める内容について、この「改善命令からの期間」については、5年となっており、また対象となる患者については、「入院から一年以上経過している者もしくは現に開放処遇の制限を受けている者」に限定されます。

ちなみに、厚生労働省の会議資料によると、「条例等で定める内容」として、「この条件に該当する精神科病院の管理者は定期的(医療保護入院に係る定期病状報告と同様)に報告書を提出しなければならない」との記載がありますので、上述の精神保健福祉法の条文では「求めることができる」と義務口調でないにしろ、結局は報告を条例等で義務付けているという理解でよさそうです。

ちなみに任意入院者に関しては、以下の第二十二条の三の条文に基づき、「入院後1年経過時及び以後2年ごと(1年後、3年後、5年後、7年後・‥)に同意書の提出を求め、書面によって入院に係る同意の再確認を行うものとする」こととなっています。(出典:厚生労働省会議資料

第二十二条の三

精神病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。

出典:精神保健福祉法

この同意書に関しては、基本的に都道府県への提出は求められていませんが、監査の時に確認されることがあり、定期的に取得することが必要です。

定期病状報告書のフォーマット

ちなみに、定期病状報告の様式に関しては書式が定められており、その書式を用いて報告を行う必要があります。

こうした様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。法律に基づく定期病状報告については、いろいろな条件があって混乱するところもありますが、ざっとまとめると以下のようになります。

まとめ
  • 定期病状報告は精神保健福祉法によって定められている。
  • 措置・医療保護では定期的な病状報告が義務付けられている。
  • 任意入院者での報告対象は特定の基準を満たす場合のみであるが、同意の再確認は定期的に必要である。

最後までお読みいただき、ありがとうございました

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

コメント

コメント一覧 (1件)

コメントする

目次