【精神保健福祉法】措置入院の23条通報と24条通報の違いは?精神科医が解説します

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、精神科の医療現場でよく登場する「措置入院」における、23条通報と24条通報についての違いを解説していきます。

この記事の内容

精神科医が「措置入院」における、23条通報と24条通報についての違いを解説していきます!

措置入院とは

まず、この23条通報や24条通報などについて理解する前に、「措置入院」という制度について説明していきます。

措置入院とは、簡単に言うと、「自傷や他害のおそれが切迫している精神疾患の患者を、都道府県知事の命令による行政措置として強制入院させる制度」のことです。

この入院形態は、他の精神科の入院形態とは大きく異なり、行政の権力によって強制的に患者を病院に入院させるというところにあります。そこには患者の意思も家族の意思も介在しない、行政措置としての絶対的冷徹さが存在します。

そのため、現場で措置入院となるのは、症状に左右されて家族などの他人に暴力行為をはたらいて警察沙汰になるなど、一線を超えた若しくは越えかけている切迫した状態の患者さんが多いです。

その根拠法令は、精神保健福祉法の第二十九条に規定されています。

第二十九条 都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

そしてその要件としては、二名以上の精神保健指定医が診察し、自傷他害の恐れのある精神疾患の患者であると言うことが判定されないといけません。いわゆる「措置診察」と言うやつです。

第二十九条

2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、その指定する二人以上の指定医の診察を経て、その者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各指定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。

とはいえ、自傷他害の恐れが切迫している患者さんは、どうやって指定医の診察を受けに来るんでしょうか。まさか、「私を措置入院にしてください」と言って指定医の元にノコノコやってくるはずはありません。

そこには、「通報」と言うプロセスが存在します。その通報については精神保健福祉法に定められており、それらに基づいて都道府県知事に通報等があること(27条1項)が診察の開始に必要になってきます。

第二十七条 都道府県知事は、第二十二条から前条までの規定による申請、通報又は届出のあつた者について調査の上必要があると認めるときは、その指定する指定医をして診察をさせなければならない。

通報者の種類

精神保健福祉法は、自傷・他害の恐れがある精神障害者の通報について、以下のように定めています。

通報についての各条の規定

22条 一般人からの書面による申請
23条 警察官の通報
24条 検察官の通報
25条 保護観察所長の通報
26条 矯正施設長の通報
26条の2 精神科病院管理者の届出
26条の3 医療観察法の通院処遇者に関する通報

つまり、一般人から警察官、検察官など、さまざまな立場からこうした患者の通報を行い、措置診察につなげることができるわけです。

と言っても、一般人からの通報などは私も聞いたことはなく、非常に数は少ないはずです。現場で多いのは、23条の警察官通報と、24条の検察官通報だと思います。

警察官通報と検察官通報

それぞれの条文を照らし合わせて、見ていきましょう。

まずは23条の警察官通報について。

(警察官の通報)

第二十三条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。

続いて検察官通報について。

(検察官の通報)

第二十四条 検察官は、精神障害者又はその疑いのある被疑者又は被告人について、不起訴処分をしたとき、又は裁判((一部中略))が確定したときは、速やかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。(以下略)

例えば現場で、警察官が自傷他害の恐れがある患者を保護した場合には、23条の警察官の通報が行われると想像することができます。

では検察官通報となる場合はどのような場合なのか。そもそも検察官とは何をする人なんでしょうか。

検察官は、「罪を犯した人を捜査して、裁判所に訴える」職権を持つ職業です。

刑事事件において、警察官が被疑者を逮捕すると、取り調べの後に身柄が検察官に送られます。

これを検察官送致と呼びますが、そこで検察官が罪状について捜査検討し、起訴するか、不起訴するかを決めるわけです。

その役割を担う検察官が通報するということですから、要するにすでに犯罪を犯してしまった、若しくはそれが疑われて、検察官による捜査が行われていることが前提になります。

ですから、実際の現場でこのケースになるのは、実際に他人などを殴ったりして逮捕され、刑事事件として立件されている場合など、すでに事例化してしまっているケースになります。

まとめ

措置入院の通報者について、主要な23条通報と24条通報の違いを解説してまいりました。

この23条、24条通報については、精神保健指定医の症例報告などでも、どのような通報に基づいて措置診察に至ったのかといったところは必ず記載することになります。

そのため、この違いははっきりと理解しておくようにしましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

おまけ

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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