【精神科医が解説】抗精神病薬で眠気・鎮静作用が起こる理由は?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、抗精神病薬で生じる副作用の1つ、眠気や鎮静といった症状が出る理由について解説していきます。

この記事の内容

抗精神病薬の副作用である鎮静や眠気が起こるメカニズムについて解説!

抗精神病薬の鎮静作用とは

統合失調症などで用いる「抗精神病薬」には、効果のほかに様々な副作用があります。

その中でも起こりやすい副作用の1つに、「鎮静・眠気」といったものがあります。これは薬を飲むと眠かったり活動性が落ちてしまったりという症状です。

それぞれの副作用にはメカニズムがあるわけですが、その仕組みについて解説していきます。

鎮静作用のメカニズム

抗精神病薬の効果のメカニズムには、ドパミンD2受容体拮抗作用が関わっているとされています。

統合失調症では、神経伝達物質であるドパミンが過剰になることで様々な症状をきたすと考えられ(ドパミン仮説)、薬でそれをブロックすることで幻覚や妄想などの症状を改善するという考えがされてきました。

しかし、抗精神病薬の中にはその他の神経伝達物質の受容体にも作用するものがあり、それが様々な効果や副作用をもたらします。

その受容体と作用・副作用について図にまとめてみました。

日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)128,173~176(2006)より引用作成

この中でも、「アドレナリンα1受容体拮抗」と「ヒスタミンH1受容体拮抗」が鎮静作用に関与していることがわかります。

これらの受容体に作用することで、眠気や過鎮静をもたらすのです。

ちなみにヒスタミンに関してですが、花粉症の薬でも眠気が出ることがあると思います。これは「抗ヒスタミン薬」という薬の作用になります。このヒスタミン受容体は脳にも存在しているので、これをブロックしてしまうことで眠気が出てしまいます。

抗精神病薬に関しても、これと同様のメカニズムで眠気の副作用が出てくるのです。

薬によって受容体への親和性はことなる

抗精神病薬の中には、鎮静作用が強いものもあれば、ほとんどないものもあります。

これは、抗精神病薬それぞれの各種受容体への親和性の強さ、作用の強さによって変わってきます。

各種の抗精神病薬の副作用についてのメタ解析(様々な臨床結果を統計的にまとめて解析した研究)によると、鎮静作用については下のような結果になっています。右に行けば行くほど、偽薬と比べて鎮静作用が高かったことを意味しています。

Leucht et al, Lancet 2013より引用

この表を見てみると、日本でよく使われる薬の中では「クロルプロマジン(コントミン®)」「オランザピン(ジプレキサ®)」や、「クエチアピン(セロクエル®)」といった抗精神病薬の鎮静効果が高いことがわかります。

副作用は効果にもなりうる

抗精神病薬の代表的な副作用である鎮静、眠気ですが、これらの副作用は使い方によっては有益になることもあります。

たとえば、陽性症状によって激しい興奮をきたしている場合は、抗精神病薬の鎮静作用がうまく働くと症状のコントロールの一助となることがあります。

ほかには不眠に悩む患者さんには、鎮静作用のある抗精神病薬を夜に飲むことで、睡眠を助けることも考えられます。実際に、一部の抗精神病薬には睡眠薬代わりとして処方されるものもあります。

おわりに

いかがでしたでしょうか。抗精神病薬の鎮静のメカニズムについて、解説してみました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

まとめ

  • 抗精神病薬の鎮静作用は抗ヒスタミン作用や抗アドレナリンα1作用などによる。
  • 薬によってそれぞれの受容体への親和性は異なる。
  • 鎮静・眠気の副作用は場合によっては治療的に働くこともある。
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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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