【精神科医が解説】抗精神病薬シクレスト舌下錠について解説。副作用や用法用量、半減期は?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

今回は、抗精神病薬シクレストの用法用量やについて解説していきます。

この記事の内容

シクレストの用法用量や半減期について解説!

シクレストとは

シクレストは、非定型抗精神病薬の一つで、統合失調症に使用される薬剤の一つです。

一般名はアセナピンといい、商品名はシクレストと呼ばれます。抗精神病薬の分類の中ではMARTAと呼ばれるお薬になります。

その、用法・用量や血中動態、副作用などについて見ていきましょう。

用法・用量

シクレストは、5mgと10mgの2種類の剤型があります。価格は以下の通りです。

  • 5mg舌下錠:227.6円
  • 10mg舌下錠:346.1円

シクレストの剤型の特徴は、「舌下錠」といって水なしでさっと溶ける錠剤となっており、飲み込むのではなくて、舌下の粘膜から吸収する薬となっています。(舌下投与)

また、舌下投与後10分間は飲水や飲食を避けなければいけません。

添付文書によると、シクレストの用法・用量について以下のように書かれています。

通常、成人にはアセナピンとして1回5mgを1日2回舌下投与から投与を開始する。維持用量は1回5mgを1日2回とし、年齢、症状に応じ適宜増減するが、最高用量は1回10mgを1日2回までとする。

半減期・最高血中濃度到達時間

日本人の健康成人にアセナピン5mgを単回舌下投与したときの、最高血中濃度到達時間、半減期は以下のようになっていました。

項目Tmax(最高血中濃度到達時間)T1/2(半減期)
時間(hr)1.2517.1
シクレスト舌下錠 添付文書より

この結果によると、シクレストを1回投与すると、1時間程度で血中濃度が最高に達することがわかります。

しかしお薬は吸収された後、絶えず体内で代謝されていくので、徐々に血中濃度は減少していきます。

その結果、血中濃度が最高の血中濃度の半分に減るまでの時間を半減期と言います。シクレストの半減期は17時間程度と、ほぼ1日かけて半分程度に減ることがわかります。

こうした薬の動態から、血中濃度を安定させるために添付文書上の用法は1日2回投与になっています。

シクレストの副作用

シクレストの副作用の中で、最も多いのが傾眠(12.9%)となっています。

この眠気は、ヒスタミン受容体やα1受容体といったさまざまな受容体に作用することに由来するものです。

こうした副作用は、例えば興奮や焦燥が強い患者さんに使うことでうまく鎮静効果をもたらしたり、不眠に効果があったりと、治療に有益となることもあります。

ただ、社会生活を営む上で日中に眠気が出てしまうと、社会復帰の支障となってしまいます。

そのため、添付文書上は2回投与となっていますが、臨床現場では、夕方や夜などに1回投与にまとめて処方する医師もいるようです。

また、舌下投与のため、口腔内の痺れといった口の感覚鈍麻が10.1%に見られたと報告されており、主要な副作用の一つとなっています。 

シクレストの効果の特徴

シクレストは、MARTAと呼ばれる抗精神病薬の中でも、糖尿病患者に禁忌となっていないところが特徴です。他のMARTA であるオランザピンやクエチアピンは、糖尿病患者に禁忌となっており、使用することができません。

また適度な鎮静効果と、ドパミン受容体への強い効果があり、統合失調症の陽性症状への効果が期待されます。

ただし、使い方によっては傾眠をもたらしうること、舌下投与のために投与後10分間の飲水・飲食を避ける必要があることや、口の感覚鈍麻 (→口の痺れなど)といった副作用が多いことなどがデメリットとして挙げられます。

おわりに

シクレストの薬物動態と、用法・用量について解説しました。最後までお読みいただきありがとうございました。

まとめ

  • シクレストは舌下投与である点がユニーク
  • 傾眠の副作用が最も多い。他に口腔内の痺れなども多い
  • 添付文書上は、1日2回投与となっている

出典

1)医療用医薬品:シクレスト添付文書 KEGGデータベース https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00066293 取得日:2023年9月20日

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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