【精神科医が解説】炭酸リチウムが食塩制限患者に禁忌である理由は?

目次

はじめに

こんにちは。精神科医として心の健康に関する情報を発信している、精神科医ブロガーのやっくん(@mirai_mental)です。

この記事では、炭酸リチウムで禁忌とされている「食塩制限患者」について、どうして禁忌なのかを解説していきます。

炭酸リチウムの禁忌

双極性障害の治療薬である「炭酸リチウム錠」の禁忌には、添付文書上、以下のものが挙げられています。

出典:https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065672.pdf

その中でも、「2.3 リチウムの体内貯留を起こしやすい状態にある患者」について、「2.3.4 食塩制限患者」について説明していきます。

なぜ食塩制限患者?

「2.3 リチウムの体内貯留を起こしやすい状態にある患者」の中で、なぜ「2.3.4 食塩制限患者」が該当するのでしょうか。メーカーに問い合わせたり、文献を参考にしたりして、その理由を探しました。

リチウムとナトリウムの挙動

その理由は、腎臓におけるナトリウムの再吸収のメカニズムにあります。

リチウムは、腎臓の糸球体で濾過された後、近位尿細管で多くが再吸収されます。これは、もともとナトリウムイオンを再吸収するためにある仕組みです。

しかし、ナトリウムも、リチウムも、同じ一価の陽イオンです。

そのため、再吸収される際に見分けがつかず、ナトリウムと同じ挙動をしてしまうのです。(N Engl J Med . 1974 Mar 28;290(13):748-9)

食塩制限患者では何が起こる?

食塩を制限していると、体液中のナトリウムが低下してしまうので、それを防ぐために腎臓はナトリウムの排出を防ごうとします。

そのため、ナトリウムの再吸収を亢進させ、ナトリウムが体外に出ていくのを防ごうとします。

しかし、先ほどの理由から、ナトリウムだけではなく、似たような挙動をするリチウムの再吸収も亢進してしまいます

そのため、リチウムの排泄が低下してしまい、「リチウムの体内貯留を起こしやすい状態」になってしまうわけです。

まとめ

いかがでしょうか。リチウムが食塩制限患者に禁忌という話は意外と盲点だったので、今回原因を探ってみて非常に勉強になりました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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・食塩制限患者では、添付文書上リチウムの投与は禁忌と書かれている。

・その理由は、ナトリウムとリチウムの近位尿細管での挙動が似ているから!

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参考

食塩制限患者に注意!リーマス、デパケン、レンドルミンのどれ?【全文掲載】-日経メディカル

Letter: Lithium toxicity enhanced by diuresis-(N Engl J Med . 1974 Mar 28;290(13):748-9)

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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