【精神科医が解説】治療抵抗性統合失調症に対するクロザピンの導入基準

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治療抵抗性統合失調症、クロザピン、導入基準

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こんにちは。精神科医ブロガーのやっくんです。

本記事では、治療抵抗性統合失調症に用いるクロザピンの導入基準について勉強していきましょう。

目次

クロザピンとは

幻覚妄想や陰性症状など様々な精神症状をきたす「統合失調症」。基本的に、治療には抗精神病薬と呼ばれる薬物をもちいた治療を行います。

しかし、中にはこうした抗精神病薬を十分に用いても奏功しない例が存在し、そうした場合に登場するのが「クロザピン」と呼ばれる薬剤になります。

これは難治性の統合失調症に効果が期待できる夢のおくすりです。

しかし、このクロザピンには重大な副作用があります。

そのひとつが顆粒球減少(感染から身を守る好中球が減少してしまう)というものです。

この無顆粒球症を起こしてしまうと、生体の防御機構が機能不全となり、最悪の場合感染を起こして死に至るリスクもあるため、そう簡単に導入できる薬ではありません。そのほかにも耐糖能異常、心筋炎などの有害事象もあり、注意が必要です。

そのため、クロザピンは統合失調症治療における最後の切り札、最終兵器といった位置付けがなされています。そのクロザピンには厳しい導入基準が設けられており、その基準についてみていきます。

クロザピンの導入基準

クロザピンの導入基準には、大きく分けて2つあります。

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  • 反応性不良の場合
  • 耐容性不良の場合

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それぞれの2つについてみていきます。

反応性不良について

「反応性不良」とは、要するに薬が十分に効かなかった場合のことです。

その基準について、クロザリル®(クロザピン)の添付文書では以下のように書かれています。

忍容性に問題がない限り、2種類以上の十分量の抗精神病薬((a(b クロルプロマジン換算600mg/日以上で、1種類以上の非定型抗精神病薬(リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール等)を含む)を十分な期間(4週間以上)投与しても反応がみられなかった(c患者。なお、服薬コンプライアンスは十分確認すること。
a)非定型抗精神病薬が併用されている場合は、クロルプロマジン換算で最も投与量が多い薬剤を対象とする。
b)定型抗精神病薬については、1年以上の治療歴があること。
c)治療に反応がみられない:GAF評点が41点以上に相当する状態になったことがないこと。

出典:クロザリル®錠添付文書 ノバルティスファーマ

2種類以上の十分量の抗精神病薬(CP換算600mg以上、4週間以上)というところがキーワードになってきます。なお、投与しても服薬していなかったという場合も十分ありえるので、服薬のアドヒアランスには注意が必要です。

もし非定型抗精神病薬が併用されている場合はどうなの?と疑問が浮かびますが、上述したa)基準にしたがうと、もっともCP換算で投与量が多い薬剤を対象として、カウントすることになります。要するに併用薬の合計というわけではないようですね。

耐容性不良について

耐容性不良とは、薬が副作用などの影響で継続することが難しい状況のことを言います。

リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール等の非定型抗精神病薬のうち、2種類以上による単剤治療を試みたが、以下のいずれかの理由により十分に増量できず、十分な治療効果が得られなかった患者。
・中等度以上の遅発性ジスキネジアa)、遅発性ジストニアb)、あるいはその他の遅発性錐体外路症状の出現、または悪化
・コントロール不良のパーキンソン症状c)、アカシジアd)、あるいは急性ジストニアe)の出現
a)DIEPSSの「ジスキネジア」の評点が3点以上の状態。
b)DIEPSSの「ジストニア」の評点が3点以上の遅発性錐体外路症状がみられる状態。
c)常用量上限の抗パーキンソン薬投与を行ったにもかかわらず、DIEPSSの「歩行」、「動作緩慢」、「筋強剛」、「振戦」の4項目のうち、3点以上が1項目、あるいは2点以上が2項目以上存在する状態。
d)常用量上限の抗パーキンソン薬投与を含む様々な治療を行ったにもかかわらず、DIEPSSの「アカシジア」が3点以上である状態。
e)常用量上限の抗パーキンソン薬投与を含む様々な治療を行ったにもかかわらず、DIEPSSの「ジストニア」の評点が3点に相当する急性ジストニアが頻発し、患者自身の苦痛が大きいこと

上記の基準のように、抗精神病薬による副作用であるパーキンソニズムやジストニア、ジスキネジアなどの錐体外路症状が起こってしまった場合で、治療が続けられない場合には、クロザピンの使用を検討します。

まとめ

クロザピンは、治療抵抗性の統合失調症に対して、症状を大きく改善する強力な武器となりえます。

しかし、その副作用の観点から、使い方を誤れば重大な悪影響を及ぼしかねない、諸刃の剣とも言えます。

そのため、使用するためにはCPMS(クロザリル患者モニタリングサービス)への医療機関や医師、患者の登録が義務となっており、最低でも18週間の入院期間が求められるなど使用のハードルも高い薬剤です。

私も精神科医の「最後の切り札」であるクロザピンの使い方について、これからも勉強をしていこうと思います。

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・クロザピンには2種類の導入基準があることを覚えておく!

・反応性不良(十分量使用しても反応が乏しい場合)

・耐容性不良(副作用のため十分に薬が使えない場合)

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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この記事を書いた人

大学病院勤務の20代精神科医。市中病院で初期研修後、大学にて精神科後期研修3年目。ブログ運営が趣味(3サイト運営中)勉強を兼ねて、精神科の知識やネタについてアウトプットしていきます。

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